私たちが日々食している野菜は、もちろん工業製品ではない。太陽のもとに大地に根をはる植物で、そして誰かが育てたものだ。野菜たちは、私たちの世代だけの力でできるものでもない。土はかつての動植物の営みを養分にして肥沃になり、雨もまたかつて地球上のどこかで空に昇ったものだ。ということは、私たちの営みもまた、未来の土となり雨となる。この一見とてもシンプルなことを、私たちは忘れがちな社会に生きている。小野邦彦さんは、そんな地球のサイクルへと想像力を広げる入り口を「未来からの前借り、やめましょう」というキャッチコピーとともに商品として届ける企業、坂ノ途中の経営者だ。坂ノ途中は、美味しい野菜を通して私たちと環境負荷の小さな農業を志す新規就農者の皆さんを繋ぐ。国内で前例のないこのビジネスを成長させる小野さんの活動は、芸術的な企業経営だと僕は思う。その想いをあらためて伝えたくて、坂ノ途中本社を訪ねた。